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2016年4月14日掲載

丹羽 諭   Satoshi Niwa ルポルタージュ
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 桐生の建物   Buildings in Kiryu City, Gunma Prefecture   New Work
 丹羽 諭 Web写真展通算第100作   The 100th Work of Satoshi Niwa's Web Photo Gallery



近江商人をその出身地から八幡、湖東、日野、高島商人と区別して呼ぶ。江戸日本橋界隈は伊勢松阪、近江八幡の商人が占め、近江日野商人の多くは北関東を商圏とした。薬の販売、上質な伏流水を使った清酒、味噌などの醸造を手掛けた商人が多い。

群馬県桐生市の「新町重要伝統的建造物群保存地区」に、日野商人、矢野久左衛門の店蔵「有鄰館」がある。寛延2(1749)年に開業、清酒の醸造と質商を始め、当初の屋号は「近江屋」。「有鄰」は孔子の故事から引用した醤油の商標。

その後、久左衛門の店は呉服太物、荒物など事業を拡大、お茶、化学品、包装資材、機械等を扱う近代企業として今に続いている。

今回、取材はしていないが、埼玉県秩父市の老舗「矢尾百貨店」も日野商人の店だ。矢尾喜兵衛が、矢野久左衛門の近江屋と同年の寛延2(1749)年に開業、酒造業から始めた。両社は日本経済新聞の連載企画「200年企業」で紹介されている。

日野商人は「乗合商い」と呼ぶ共同経営方式で、千両が貯まると新規に出店、「日野の千両店」と呼ばれた。滋賀県「近江日野商人館」の資料に、群馬、埼玉、栃木、茨城で、幕末までに284カ所の出店があったという数字が出ている。

さて、桐生は織物業で栄えた歴史を持ち、文化財建造物が実に多い。以前、掲載の「彦部家屋敷」はその歴史が別格だが、明治11(1878)年に群馬県衛生所兼医学校として建った現在の「桐生明治館」と共に国指定の重要文化財である。

時代は新しいが、大正5(1916)年築の桐生高等染織学校の本館「現、群馬大学同窓記念会館」は、NHKの朝ドラマ「花子とアン」の撮影に使われた国登録有形文化財。ピンクの外壁の大正6(1917)年築の絹糸会社の事務所「絹撚記念館」は桐生市指定重要文化財。大正8(1919)年築の「桐生倶楽部」も国登録有形文化財で他にもいろいろとある。とても全部は回り切れなかった。
参考サイト
 桐生市 文化財一覧 http://www.city.kiryu.lg.jp/kankou/bunkazai/1002120.html

使用カメラ:ニコンD7200, D5300. レンズ:DX 10-24mm f/3.5-4.5G ED, 16-80mm f/2.8-4E ED VR, 55-200mm f/4-5.6G ED VR II.


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01-06 有鄰館
1,100坪の敷地に江戸から昭和にかけての11棟の蔵群がある。市が管理し、舞台、演劇、コンサートなどに利用されている。ビール蔵を除いて桐生市指定重要文化財。桐生市本町2-6-32。

 01 店舗外観 大正5(1916)年築の店舗。食品販売の他、茶房がある。近江屋は今は「(株)矢野」という近代企業。

 02 煉瓦蔵

 03 蔵の外観

 04 蔵の空間

 05 蔵内部の土壁

 06 店舗内の井戸 清酒、醤油の醸造に使用された井戸。今も飲用可。


07-11 桐生織物会館旧館(桐生織物記念館)
昭和9(1934)年築。当時、流行したスクラッチタイル張りの外壁に、屋根を青緑色の日本瓦葺で葺いた。織物業者の組合事務所で、現在は織物の展示場。桐生市永楽町1184-4。国登録有形文化財。

 07 建物外観

 08 2階窓のステンドグラス

 09 糸の見本

 10 階段の手すり

 11 建物全景


12-14 西公民館本館
昭和7(1932)年築の鉄筋コンクリート造りの旧水道事務所。桐生織物会館旧館から道路を挟んで真向かいにある。現在は西公民館として使用。桐生市永楽町2-16。国指定登録有形文化財。

 12 外観

 13 石造りの階段

 14 土蔵 内部は機械室。


15-22 桐生倶楽部
大正8(1919)年に桐生の経済界「桐生懇話会」が社交倶楽部として建設、設計、清水巌、施工が清水組。桐生市仲町2-9-36。国登録有形文化財。

 15 外観

 16 煙突と窓

 17 小窓

 18 正面玄関の円柱

 19 窓

 20 会議室

 21 階段の窓

 22 階段

23 織物参考館「紫(ゆかり)」
   ノコギリ屋根
明治10(1877)年創業の(株)森秀織物会社の建物。有料で織物機械の展示、解説をしている。桐生市東4-2-24。国登録有形文化財。


24-26 桐生明治館
明治11(1878)年、前橋市の県庁前、現群馬会館の場所に衛生所兼医学校として建ち、昭和3(1928)年、相生村役場として現在地に移築。昭和59(1984)年の修理で創建当時に復元。館内の喫茶室がレトロな雰囲気で人気がある。桐生市相生町2-414-6。国指定重要文化財。

 24 外観

 25 貴賓室 奥の赤い椅子は大正、昭和の両天皇が桐生に来た時に使用した椅子。

 26 室内から外廊下を見る


27-32 旧模範工場桐生撚糸合資会社事務所棟
明治35(1902)年、国の殖産興業政策で模範工場としてJR桐生駅前に桐生撚糸合資会社を設立、明治41(1908)年に模範工場桐生撚糸株式会社、大正7(1918)年に日本絹撚株式会社に改称、現在の建物は大正6(1917)年築。大谷石造り洋風2階建の群馬県最古の洋風石造建造物。桐生市巴町2-1832-13。市指定重要文化財。

 27 外観

 28 正面

 29 1Fロビー 昭和40年代に信用組合の店舗に使用された。

 30 環頭大刀(かんとうのたち)と
    埴輪女子像
取材の時、古墳時代の出土物や、織物の展示会が行われていた。手前の環頭大刀は、韓国百済の影響を受けた渡良瀬川流域で唯一の出土例。市指定重要文化財。

 31 日本絹撚株式会社の製品

 32 江戸時代の縞柄見本帳


33-37 群馬大学工学部同窓記念会館
大正5(1916)年に桐生高等染織学校の本館として建ち、本館玄関の一部と講堂が同窓記念会館として残った。テレビや、ポスターの撮影によく使用され、NHK「純情きらり」「花子とアン」のロケも行われている。桐生市天神町1-5-1。国登録有形文化財。

 33 記念館正面

 34 講堂の大空間 イギリスで考案されたハンマービームと呼ぶ屋根構造。天井をより高く、開放的な空間を演出、教会堂などに採用される工法。

 35 長椅子

 36 2階通路

 37 吹き抜けホールの大階段

38 水道資料館 昭和7(1932)年築、鉄筋コンクリート造りの「元宿浄水場」事務所。室内は資料館。桐生市元宿町14-37。国登録有形文化財。


39-40 煉瓦のノコギリ屋根
大正時代の金谷レース工業の建物をベーカリーカフェに改装。蕎麦店もある。桐生市東久方1-1-55。国登録有形文化財。

 39 ノコギリ屋根

 40 店内空間

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