東京港区白金台「旧朝香宮邸」、現「東京都庭園美術館」は、昭和8(1933)年築、鉄筋コンクリート造りの「アール・デコ」の邸宅として知られている。コンクリートは大正12(1923)年の関東大震災の後、急速に普及した。
大正11(1922)年、フランスに留学中の朝香宮は交通事故に会った。治療のために長期滞在を余儀なくされ、夫人もフランスに渡った。当時のフランスはアール・デコの全盛期だった。夫妻は大正14(1925)年7月にパリで開かれた「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」通称「アール・デコ博」を見学、強く惹かれたという。アール・デコについては東京都庭園美術館のWebサイト内に解説ページがあるので参照されたい。
夫妻はその年12月、高輪の宮邸に戻り、白金台に新邸の建設を計画した。基本設計を宮内省内匠寮工務課、室内装飾をフランスの芸術家「アンリ・ラバン」に依頼、日本の伝統技術とアール・デコを融合させた建物が完成した。
内匠寮工務課は当時の建築界でエリート集団だった。技師の権藤要吉は、1925~26年、研究のために欧米に派遣され、アール・デコ博も訪れて朝香夫妻の信頼があった。同じく技師の北村耕造は、渋沢栄一の洋館、誠之堂、晩香廬、青淵文庫を設計した清水組(現、清水建設)の田辺淳吉と東京帝国大学建築学科の同期だ。彼らは各宮家の邸宅、赤坂離宮、東京国立博物館など、多くの近代建築物を残している。
朝香宮邸の施工は現在の戸田建設で、同社のWebサイトを見ると、創業者、戸田利兵衛は京都の大工の家に生まれ、宮大工の修業を積んだ人物。明治14(1881)年に東京、赤坂で「戸田方」を創業、後に「戸田組」、さらに戸田建設へと発展した。この頃から同社は早稲田大学大隈講堂、横浜税関庁舎など、歴史に残る多くの鉄筋コンクリートの建物を建てている。
戦後、旧朝香宮邸は外相、首相公邸に使用され、さらに民間企業に所有が移ったが、幸い、内部の改造はわずかで、建築当時の姿がほぼそのまま残った。平成27(2015)年、国指定重要文化財(東京都港区白金台5-21-9)。
東京都庭園美術館
http://www.teien-art-museum.ne.jp/
使用カメラ:ニコンD7200, D500. レンズ:DX AF-S 10-24mm f/3.5-4.5G ED, AF-S 16-80mm f/2.8-4E ED VR, AF-S 55-200mm f/4-5.6G ED VR II.
|
|