埼玉県川島町の国登録有形文化財「遠山記念館」は、説明によると、日興証券の創立者、遠山元一(明治23(1890)年~昭和47(1972)年)が、故郷に母の住まいをと、2年7ヶ月をかけて昭和11(1936)年に完成させた住宅だ。陸軍の青年将校らによる二・二六事件が起きた年である。当時の日本は世界恐慌の影響で経済が停滞してとりわけ農村はどこも困窮の極みにあった。その中で当時最高の建築技術と良材を使って建てた伝統的日本家屋で、建設は地元経済に大いに貢献したに違いない。
戦後、母が亡くなり、日興証券の迎賓館として使用されたが、遠山は建物の価値を考え保存のために財団法人「遠山記念館」を設立、昭和45(1970)年から一般公開している(現在は公益財団法人)。遠山が収集した11,000点にも及ぶという美術品も展示、自分に知識はないが、訪れた時、敷地内美術館に伊万里の柿右衛門様式の鉢、中国宋時代の焼き物の人形などが展示されていた。
建物は趣の異なる東棟、中棟、西棟の3棟で構成、畳敷きの渡り廊下でつながり、表玄関がある茅葺の東棟は農家風で居間に囲炉裏がある。中棟の書院造りの大広間は接客に使用し、2階に洋室がある。2階は常時公開をしていないため、今回は撮影していない。
西棟は数寄屋風造りで仏間や茶室がある。茶室の床の間に江戸時代の御三卿のひとつ、田安家三代の徳川斉匡(なりまさ)が福寿草を描き、老中の松平定信が和歌を添えた掛軸があった。すべてが文化財だった。
なお、記念館では今月2月14日(土)~3月15日(日)「雛の世界」展を開き、大広間では遠山が長女の初節句の祝いに揃えた雛人形を展示する。今回の撮影は受付で許可を得、このWeb-ProPhoto写真展への出展もあらためて許可を申請して掲載した。 (埼玉県比企郡川島町白井沼675)
参考Webサイト:遠山記念館 http://www.e-kinenkan.com/
使用カメラ:ニコンD800, D610. レンズ:FX 16-35mmf/4G, 28-300mm f/3.5-5.6G
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