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2016年5月16日掲載

丹羽 諭   Satoshi Niwa ルポルタージュ
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 武蔵国カメラ風土記42 埼玉の古民家   New Work
 Old Folk Houses in Saitama Prefecture


埼玉県内の古民家を2軒訪ねた。朝霞市の国指定重要文化財「旧高橋家住宅」は、その建築部材から18世紀(1701~1800年)前半の建物と推定されている。

埼玉県内で国の指定を受けた農家建築はこの時代の建物が多い。熊谷市「平山家住宅」、秩父長瀞町「旧新井家住宅」の他、小川町「吉田家住宅」は棟板から享保6(1721)年築、秩父市蒔田の「内田家住宅(非公開)」は享保16(1731)年築と確認されている。(2016.4.6 東京新聞記事)

この享保という時代の将軍は8代吉宗、米将軍の異名がある。在位は享保元(1716)年~延享2(1745)年、「享保の改革」で新田開発に力を入れ、幕府財政は改善されたものの、庶民の生活の苦しさは変わらなかった。

享保17(1732)年の夏に西日本で虫害による「享保の大飢饉」が発生、米価が高騰した翌年、江戸で米穀商の打ち壊しが起きた。明和1(1764)年には武蔵国の中山道沿いの人々による江戸時代最大の一揆「伝馬騒動」も起きている。

今回のもう一つの古民家、さいたま市の市指定文化財「旧坂東家住宅」は、発見された墨書から幕末に近い安政4(1857)年築と確認されている。この年、幕府はアメリカ領事ハリスと下田条約を結び、翌年、彦根藩の井伊直弼が大老に就任、激動の時代の始まりとなった。

この住宅は床面積が約286㎡もある。その大きさには驚いた。坂東家は和歌山出身の商人で、見沼田んぼの「加田屋新田」を開発、名主を務めていた。今は、さいたま市が「見沼くらしっく館」として公開中。

ところで、旧高橋家住宅を訪れた時、竈で薪を焚いていた。今の使用量だと、薪はすべて敷地内で調達出来るとか。昔の農家は屋敷林である程度の燃料を確保、剪定した小枝、杉の葉、もみ殻も燃料に使った。煙は防虫効果があり、燻されて梁や柱の強度が増す。小川町「吉田家住宅」、東京都小金井市「江戸東京たてもの園」の茅葺古民家も常に囲炉裏で薪を焚いている。

参考サイト:朝霞市公式サイト 旧高橋家住宅のページ
http://www.city.asaka.lg.jp/soshiki/42/takahashike.html
さいたま市公式サイト 旧板東家住宅見沼くらしっく館のページ
http://www.city.saitama.jp/004/001/005/002/001/p040917.html

使用カメラ:ニコンD7200, D5300. レンズ:DX 10-24mm f/3.5-4.5G ED, 16-80mm f/2.8-4E ED VR, 55-200mm f/4-5.6G ED VR II.

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01-18 旧高橋家住宅 (埼玉県朝霞市根岸台2-15-10)


 01 全景 左が主屋。主屋を囲んで井戸、納屋、土蔵、薪小屋、屋敷林があり、右側の建物は明治時代の納屋。

 02 主屋 茅葺の広間型三間取り、床面積が約127.88㎡、この頃の農家の平均的な大きさだろう。

 03 竈の作業

 04 座敷 竈の煙で煙っていた。

 05 裏口から座敷を見る

 06 格子窓

 07 黒光りした床

 08 「デイ」と呼ぶ床の間付座敷

 09 石臼

 10 物置

 11 縁側

 12 室(ムロ) サツマイモなどを保存した地下の貯蔵庫。

 13 水神の祠 以前は湧水が出ていた。

 14 薪小屋

 15 納屋

 16 納屋

 17 倉 昭和22(1947)年築。御膳の椀、火鉢など、生活用品を保管した。

 18 井戸


19-40 旧坂東家住宅 (埼玉県さいたま市見沼区片柳1266-2)


 19 外観

 20 外観正面

 21 式台 役人などを出迎えた格式ある玄関

 22 式台の衝立

 23 茅のひさし

 24 囲炉裏の間 「かって」と呼んでいた。

 25 戸板と花

 26 囲炉裏の自在鉤(じざいかぎ)

 27 奥座敷(仏間)

 28 階段

 29 屋根裏部屋

 30 箪笥

 31 400枚の一分銀 平成5(1993)年の発掘調査で発見された。押入れ下の土中の土瓶の中にあった。

 32 釘隠し

 33 奥デイ 付書院の付いた奥座敷。

 34 書院の障子

 35 組子のデザイン

 36 障子のデザイン

 37 書院の外廊下

 38 土間

 39 味噌部屋の外壁

 40 外観

41 平山家住宅 2011年12月撮影。熊谷市樋春1067。源平合戦に名がある平山武者所季重末裔の家。18世紀初めの建築と推定。
丹羽 諭「武蔵国カメラ風土記13 古民家」を参照。

42 新井家住宅 2016年1月撮影。屋根の置石に特徴がある。秩父郡長瀞町長瀞1164。長瀞町郷土資料館内。18世紀中頃の建築と推定。

43 吉田家住宅 2012年7月撮影。比企郡小川町勝呂西浦424。享保6(1721)年の建築。
丹羽 諭「武蔵国カメラ風土記13 古民家」を参照。

44 内田家住宅 2013年8月撮影。秩父市蒔田891。享保16(1731)年の建築。現在修復作業中。

45 江戸東京たてもの園 2010年11月撮影。東京都小金井市桜町3-7-1 (都立小金井公園内)。

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